酒匂川の河原で、写真のような白っぽいトーナル岩の中に黒っぽい岩石が入ったものを見ることがあります。このような黒っぽい岩石を、ゼノリス(捕 獲岩)と呼びます。
ゼノリスとは、地下数10km付近で発生したマグマが上昇してくるときに取り込んだ、マグマの通り道(火道)の周囲の岩石のことです。ゼノリスには、いろいろな種類の岩石があり、ゼノリスをよく観察することにより、マグマが上がってきた地下をつくる岩石を知る手がかりになります。
ただ、難しいこともあります。それは、マグマに取り込まれたあと、ゼノリスにマグマの熱による変成作用がはたらいて、見た様子や成分がもとの岩石のままではないということです。また、花崗岩体をつくるような大量のマグマが地下数km付近にたまり、ゆっくりと冷えていくとき、先に結晶になりやすい黒っぽい鉱物がマグマの下部や周辺部に集まることがあります。それがゼノリスのような黒っぽい岩石に見えるということもあり、区別が難しいのです。
中村 俊文(県立生命の星・地球博物館 学習指導員)
ゼノリス(黒色の部分)が入ったトーナル岩