大井町には、6種類のセミが暮らしています。7月初めに鳴き始めるニイニイゼミをスタートとして、秋近くに鳴き始めるツクツクボウシまで、セミたちの合唱が続きます。
その中でヒグラシは、アブラゼミと同じくらいの時期に登場するセミです。高い温度は好まないためか、朝と夕方に鳴くことが多く、カナカナと表現される鳴き声は、とても涼しく、そして心地よく感じます。
ヒグラシは、大井町以外の地域でも、スギ林でたくさん見ることができ、植林された暗い林を好む傾向があるようです。ヒグラシがたくさんいる林を歩いてみると、人の気配を感じたセミたちが次々に飛び立ち、林全体が生きているような錯覚を覚えました。
スギの木の根元を掘ってみると、ヒグラシの幼虫が出てきます。とげのある前脚で根をしっかりと抱え込んでいます。大小いろいろな大きさが見られるので、年齢はさまざまだと思われます。
何年もかかる幼虫の時期に比べて、わずかしか生きられない成虫の時期を考えてみると、セミたちが次の世代につなげるために精一杯生きていると思わずにはいられません。
酒井 春彦(中井町立井ノ口小学校教諭)
カナカナゼミ ヒグラシ