多くの生き物たちが、寒さにじっと耐えて、隠れ家で過ごしている時期に、ゆっくりではあるものの、日向の地面を歩いている黒っぽいアリがいます。よく見ると、口に実をくわえています。これがクロナガアリです。
このアリは、主に草の実を集めて食糧にしている、日本で唯一といえる収穫専門のアリです。たいていのアリが春から夏にかけて活発に活動するのに対して、クロナガアリは、たくさんの実が落ちる秋から活動を活発化させます。
巣を掘ってみると、部屋にはアリによってきれいに皮がむかれた種がぎっしりと詰まっています。私は一番底まで巣を掘ったことはありませんが、掘った人によると、深いものでは4mもあるそうで、その労働力には大変驚かされます。
クロナガアリは、収穫に適した環境を好むので、草がまばらに生えた運動場の端や空き地、畑の隅などで見ることができます。大井町には大変多く、根岸山ではたくさんのクロナガアリに出会うことができ、天気のよい日には、実をくわえて巣へ向かうアリたちで行列ができます。
アリたちはこれから来年の春までに、どれだけの量の実を集めることでしょうか。
酒井 春彦(中井町立井ノ口小学校教諭)
クロナガアリ