ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町長の部屋 > 裸心版 2021年度

裸心版 2021年度

印刷用ページを表示する更新日:2022年3月4日更新

小田町長の裸心版 2021年度

○裸心版とは・・・

このタイトルは、町長としてのさまざまな体験を通じて感じたことを着飾らずに素直に『裸の心で発信』することで、町の進むべき道を皆さんにも考えてもらいたいという思いから「裸心版」としました。

※「羅針盤」は、船や航空機などで方位を知るための器具で、大航海時代の幕を開く重要な航海計器。

※広報おおいに掲載した原稿をWeb用に改稿して掲載しています。2カ月に1度程度の頻度で更新する見込みです。

第5回 2022年3月 「ゼロカーボンシティ」の実現をめざして

「サンマ・スルメイカ・サケ不漁の原因は温暖化 水産庁」との新聞記事を読んだ。記事では、温暖化で海水温や海流が変わり稚魚が育ちにくくなったり、産卵場が餌に乏しい沖合に移動したりして、3魚種の漁獲量が激減。この不漁は長期的に続く可能性があることを指摘していた。
今日、脱炭素社会への取り組みは世界的潮流となっている。二酸化炭素をはじめ、温室効果ガスを起因とする地球温暖化による気候変動によって、さまざまな分野での被害リスクの増大が懸念されている。近年は記録的な猛暑、大型化した台風、集中豪雨、大規模な干ばつなど異常気象による災害が各所で発生し、甚大な被害をもたらしている。パリ協定では「世界全体の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1・5度に抑える努力をする」ことを目標の一つとしている。この目標を実現するためには、「2050年頃までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする必要がある」とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が特別報告書で示しており、まさに全世界が取り組むべき緊急課題である。
本町では、第6次総合計画において、温室効果ガスの削減や資源循環型社会の形成のために、太陽光発電などによる再生可能エネルギーの有効活用などを推進する方向性を示している。その上で町がゼロカーボンシティの実現をめざすことを表明することで、計画の明文化と具体的施策に基づき、その実現を果たすべきものと考える。
折しも町議会からは、気候変動対策に取り組むことや二酸化炭素排出実質ゼロの達成、再生可能エネルギーの利用促進、気候変動の影響に対応した災害に強いまちづくりの推進を求める「気候非常事態宣言に関する決議文」が提出された。そこで、町の施策と議会の思いが合致することから、その相乗効果に期待し、「大井町気候非常事態宣言~2050ゼロカーボンシティの実現に向けて~」を、町と議会の共同宣言として公表したいと考えている。
このことにより、町・議会・町民・町内事業者など多様な主体が気候変動の危機感を認識・共有し、SDGsのめざす持続可能な社会の実現に向けて、協働により取り組んでいくことを強く望むものである。

第4回 2021年11月 根っこを育てよう

両親が亡くなり、草だらけとなっていた我が家の小さな畑に、今年はたくさんの夏野菜が実った。
昨年に続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策から各種イベントが中止に追い込まれ、特に土日祝日の公務は激減してしまった。また、不要不急の外出も控えたことから自宅にいる時間が増加した。このような事情もあって、両親が生前に耕作してきた畑を自力で復活することになったのだ。自分はこれまで手伝い程度の経験しかなかったので、園芸書を見ながらのゼロスタートとなった。

「畑づくりはまず、土づくりからだよ」という知人のアドバイスを受けて、小石交じりの土をふるいにかけ、肥料を施し、しっかりと耕した。病害虫対策ではできるだけ無農薬を心がけて育ててみた。早朝に土の乾き具合を見ながら水やりを調整し、雑草取り、わき芽かき、そしてうどんこ病やベト病といった病害の防除など、生育状況に合わせた多くの手間暇と労力がかかることを改めて実感した。
しかし、それだけに日々成長していく様子には大いなる楽しみを感じた。そしてなんといっても、自作の採れたて新鮮な野菜を、家族と出来映えを批評し合いながら食べられたことは、格別な喜びであった。これを業としている農業従事者からは、笑われたり叱りを受けたりするかもしれないが、商品となるような見栄えの良い立派な作物を育てるには、知識や経験そして技術など大変な苦労があるものだと痛感した。

友人との栽培方法を巡っての会話も楽しかったが、その中で「早く実を採ろうとはしないで、まずは根っこをしっかり育てなければならない。」との言葉が心に残った。なるほどこのことは子育てや人づくり、教育の分野にも通じるものがあるなと感じた。子育てにおいて最も大事なこと、それはこれから生きていく子どもたちの土台作りであり、花を咲かせるためのしっかりした「根っこ」を育てることにある。その「根っこ」がしっかりしていれば幹や枝に多少の損傷があっても果実は実るであろう。しかし、「根腐れ」をしてしまったらいくら肥料を与え、また病害虫駆除をしても、もうどうにもならない。どうしても幹や枝、葉のように、目に見える部分が気になるが、それを支えている根元のことに目を向けていかなければならない。
草取りをしながらそんなことを考えさせられた。

第3回 2021年9月 隠された 二つの巨大地震

9月1日は「防災の日」である。

1923年9月1日に発生した関東大震災に由来するとともに、この頃には大型の台風が上陸しやすい時期でもあり、過去の大災害を忘れることなく教訓として災害に備えていこうとの思いから制定されたと聞く。

私たちが暮らす日本は、世界でも自然災害が特に多い国と言われている。例えば、日本の国土は全世界の1%にも満たないのに、世界で起こる地震の20%は日本で発生しているとのことである。また、地震だけでなく津波、火山噴火、台風、洪水、土砂災害、雪害など、さまざまな種類の自然災害がしばしば発生し、その頻度や被害規模も年々増加傾向にある。自然災害による被害額も、全世界の被害総額の20%以上を日本が占めているとのことである。地球温暖化の影響からか、最近では線状降水帯なる局所的な豪雨が全国各地で想定外の被害を引き起こしている状況である。地震や台風などの自然災害のリスクは、この先も私たちの生活を脅かし続ける可能性がある。そうしたリスクを低減するためには過去の事例やさまざまな情報を活用しながら、災害に可能な限り備えていくことが重要だと考える。
ところで、以前、NHKテレビ番組の「歴史秘話ヒストリア」で、「隠された震災 昭和東南海地震」を見たことを思い出した。1944年12月7日午後1時36分に発生した和歌山県新宮市付近を震源とするM7.9の地震で、建物倒壊はもちろん多数の死者が出た。しかし、軍需施設が倒壊した事実を敵国に隠すために、発生後ただちに内務省が報道各社へ「報道しないこと」と通達した。さらにその地震のおよそ1か月後、立て続けに「三河地震」が発生、前の地震を超える2千人余りの死者を出していた。ところが、日本軍が太平洋諸島で劣勢の戦況下であったため、またしても情報統制により報道されなかった。研究者による正確な調査報告書は捨て置かれ、調査の続行も許されないという状況だったとのことだ。被害が大きかったにも関わらず、国家にとって不都合な事実として、二つの大震災は隠されたのであった。正しい情報と報道の自由の意義を考えさせられた。

第2回 2021年7月 ご遺族サポート「紡ぐ」

昨年の秋、97歳で母が他界した。
私たち家族にとっては、初めての葬儀を執り行うこととなった。
さまざまな手続きや心配事があったが、お願いした葬儀社が親身になって相談に乗ってくださったので、通夜・告別式はほぼ滞りなく執り行うことができた。
その一方で、母が亡くなったことにより発生するさまざまな行政手続きには初めてのこともあり、死亡届は出したものの何をすべきなのか、大切な手続きを忘れていないか、またどこから手を付けてよいものかと少々困惑した。 このような経験から、ご遺族にとってご家族がお亡くなりになった後の手続きをワンストップでご案内し、最愛の家族を亡くされたご遺族の負担軽減を図るために、庁舎内にご遺族をサポートするための窓口設置の必要性を痛感した。この事柄を生活に深く関わる喫緊の課題とし、その解決策の一つとして、本年2月1日から町民課窓口に「ご遺族サポート『紡ぐ』」を設置し、その運用を開始することとした。 担当課からは、運用開始後の4か月間における50件余の利用実績とともに、利用した方から「とても丁寧に対応してくれてありがとう」との感動と感謝の言葉をいただいたとの報告を受けた。
名称の「紡ぐ」は、「人生」「命」など、貴重なもの、形の見えないものなどを「一つにつなげる」という意味でも使われている。町では、ご遺族サポートデスクを設置するに当たり、故人の最後となり得る行政手続きを、ご遺族が「縁を紡ぐ作業」として捉え、職員も寄り添いご遺族と一緒に「紡ぐ」お手伝いをさせていただくものとし、「紡ぐ」と名付けたものである。
ご遺族にとって、ご家族がお亡くなりになった後の手続きは、生涯で何度も経験するものではないため、誰しもが不慣れなものである。また、関係する課も多岐にわたることから、ご遺族の負担軽減のために、原則予約制とすることで事前に故人にとって必要な手続きをお調べし、ご遺族が各課に足を運ぶことなく、担当職員が交代制でサポートし、可能な限り手続きを1カ所で済ませることができるようにした。
今後は運用面でのさらなる改善を図っていきたい。

 

 

第1回 2021年5月 レインボーフラッグ

2019年12月31日の第70回NHK紅白歌合戦で紅組のトリを務めたMISIAさんの「アイノカタチメドレー」で、ステージ背後に翻っていた虹色の旗「レイボーフラッグ」。この旗がレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)の象徴とされる虹色の旗だったということを、その後のある記事を読んで知った。紅組司会者綾瀬はるかさんの「年齢も性別も、国境さえも愛の力と音楽で越えていきたい。そんなMISIAさんの熱い思いが詰まったステージです」という紹介があったようだが、「この旗の意味の分からない視聴者も多かったのではないか」とも書かれていた。
レインボーフラッグは1970年代にアメリカ合衆国で掲げられ始めたLGBTの尊厳と社会運動を象徴する旗で、多種多様な性を理解していることを表しており、今では多くの国で使用されているとのことである。
さて、大井町パートナーシップ宣誓制度を7月1日から始めることとなった。
昨夏から制度導入を本格検討してきたが、同様に検討段階だった南足柄市と協定を締結することにより、カップルが協定自治体への転入転出時に改めて宣誓することもなく継続利用できるようにするため、2市町の連携事業としたものである。
この制度は、婚姻制度を利用できないLGBTなどの方の人権と個性を尊重し、パートナー同士を「夫婦に相当する関係」として町が独自に認め、宣誓受領証を交付するものである。法律上の婚姻とは異なり、法的な効力を生じさせるものではないが、町が2人の関係を尊重し、誰もが自分らしく、生き生きと生活できるよう応援することで、多様性を認め、誰も差別されることのない「平等な社会の形成」につながるものであると考えている。
現状では制度を利用してのサービスには、携帯電話の家族割やクレジットカードの家族カード作成、病院での面会や同意の機会などが想定され、限定的ではある。しかもその可否はそれぞれの事業者の裁量に依存せざるを得ない状況であるが、何よりも公の機関が関係性を認めることで「心の拠り所」になるという点で意味のある制度となることを期待している。